
閑静な住宅街が広がり、千葉大学のある西千葉駅周辺。
何の変哲もない、極々普通のよくあるまち・・・と思いきや、西千葉駅の目の前にこんな記念碑があるのをご存じでしょうか。

「駅前にミサイル?」
ミサイルらしき記念碑の正体は
なぜ駅前にこんな物騒なものがあるのかと思い、よく見てみると・・・。

「千葉市は日本のロケット研究発祥の地」
初耳です。そんなおかしなことがあるかと思い、記念碑の後ろを覗いてみると、このように書かれていました。
現在の千葉大学西千葉キャンパスには、かつて東京大学生産技術研究所があった。
1954年、研究所の教官 糸川英夫博士が中心となって観測ロケットの研究に着手。
日本初の国産ロケット「ペンシルロケット」が誕生し、1956年4月に発射実験が行われ、これを大型ロケット基礎研究とし、その後も様々な開発や実験が行われることになった。日本初の国産ロケット「ペンシルロケット」 第二次世界大戦後、自信を失っていた日本でロケット開発という壮大で夢が溢れる事業が、この千葉市を最初の拠点に始まったことを記念して建立された。
西千葉、偉大な場所でした。
現在の東京大学のキャンパスが、かつて存在していたことまでは知られていても、ロケットの研究がこの西千葉で行われていたなんて。
ちなみにこの糸川博士という人物は、日本のロケット研究の父として知られていて、小惑星探査機「はやぶさ」が探査したことで有名な惑星イトカワの名前の由来にもなった偉大な人物です。
ロケット開発に関しては、今後の記事で紹介させていただくとして、西千葉駅周辺には、これ以外にもちょっと気になる銅像など謎オブジェがたくさん存在しています。
西千葉周辺のちょっと気になるオブジェ
ラピ〇タのロボット兵!? 設置経緯不明の謎ロボット
千葉市役所の隣にある「みなと公園」には、ロボットの下半身のように見える謎オブジェがあります。

地元では「ロボ公」と呼ばれているこのオブジェ。
調査をしてみたのですが、このオブジェに関して分かっているのは、彫刻家の向井良吉氏が制作したもので、1970年に設置されたという土台部分に掘られた情報のみ。

オブジェ周辺に、その他情報は一切記されておらず、このオブジェに関して過去に調査を行った地元紙「千葉日報」も、県の行政文書に残っておらず(保存期間が最長30年で、既に破棄されてしまった)詳細不明と、調査を断念していました。
まさに謎過ぎるオブジェなのですが、作者の向井良吉氏は、第二次世界大戦においてパプアニューギニア ニューブリテン島のラバウルで終戦を迎えた人物です。
漫画家 水木しげるさんの戦争体験漫画を読んだことのある方なら、この地名を聞いてピンとくるかもしれませんが、熾烈を極めたことで有名な戦地。
向井良吉氏は、戦後に過酷な戦中体験とその記憶を彫刻で表現したとされている人物なので、その過去を知ったうえでこのオブジェを見ると、考えさせられるものがあります。
さらにこのオブジェの撮影時、オブジェの左股関節部分の隙間には、野鳥のシジュウカラが巣を作っていました。

荒廃した機械と鳥。破壊から平和への転換。
あのラピ〇タに登場したロボット兵を重ね合わせてしまいます。
飛んでいる最中に石化魔法でもかけられた? カラスらしき鳥のオブジェ
千葉城に隣接する歴史公園「亥鼻(いのはな)公園」には、支柱の上に鳥が乗っているオブジェがあります。

こちらは、戦後に活躍した芸術家、柳原義達氏の「道標」というシリーズ作品のうちの一つ。
「道標」シリーズは、鳩や鴉(カラス)を扱った作品で、「生命に対する愛の表象であると同時に、造形の根源を追求し続けてきた長い道のりに立つ道しるべである」という柳原義達氏の考えが表現されているそうで、「道標」シリーズは千葉市の他にも三重県、長野県、埼玉県など日本各地に点在しています。
このオブジェ、画像ではサイズ感が伝わりません。車止めのポールに乗る実物大のカラスくらいに見えますが、実は結構大きいんです。
亥鼻公園内にある文化会館の入り口に鎮座するくらいの大きさで、謎の存在感を放っていたりします。

なぜ道標の表現に鳥を使用したのか。そのくちばしの先には一体何があるのか、妙に考えさせられる作品です。
深夜に見たら心臓が止まりそう 黄金の枕の化け物
続いては、青葉の森公園内 彫刻の広場。ここは、その名の通り、彫刻が多数展示されている公園です。
しかし、数ある彫刻の中で異彩を放つオブジェがあります。



ものすごいインパクトです。
作品名は「<眩驚>-Ⅲ」(げんぎょう-スリー)。
作者は土田隆生氏。いつも薄暗い舞台で演じている演劇家が、急に太陽のまぶしい外に出たら、このように驚くだろう。として、表現された作品だそう。
なぜ作品の題材に、そんなマニアックな設定を選んだのかは作者にしかわかりませんが

言われて見れば、確かにそう見えてきます。
作品名が「Ⅲ」スリーであるように、実は全国各地に同じ作品が存在していて、長野市や神戸市、箱根彫刻の森美術館にも設置されています。
SNSでは「枕の化け物」として過去にバズったこともある、この眩驚シリーズ。深夜に出くわしたら悲鳴を上げてしまいそうです。
ちなみに本作品はあえて未完となっているそうで、台座部分に腰をかけてこの像を見上げることで、作品として完成するのだとか。

台座に座ったら座ったで、目線が合わないのが逆に怖いですね。
既視感ある世界的なアートがなぜ西千葉に!?
最後は、京成線のみどり台駅のロータリー近くにある「LOVE」のオブジェ。


これ、ドラマか何かで見たことあるぞ!という人も多いのではないでしょうか?
でもそれは、西千葉ではなく西新宿駅に設置されているLOVEオブジェで、西新宿の待ち合わせスポットとして有名な方。
西千葉に設置されているLOVEのオブジェも、西新宿同様にアメリカのポップアート作家、ロバート・インディアナ氏の作品なのですが、こちらは西千葉に本社をかまえる株式会社ZOZOの前社長で知られる前澤友作氏が個人所有していたものを寄贈したもの。
千葉出身の前澤氏の地元愛を感じます。そして何より、これが個人所有だったという事実に驚きです。
千葉市は歴史とアートに満ちたまち
千葉市には、ロケット研究の発祥を象徴する記念碑から、まち中にひっそりと佇む奇妙なオブジェまで、思わず足を止めてしまうようなスポットが数多くあります。
これはかつて、千葉市で計画されていた「彫刻のある街づくり」プロジェクトなるものの名残なんだとか。プロジェクト自体は無くなってしまったようですが、当時、設置されたオブジェたちは今も健在です。
それぞれの作品が持つ独特な魅力はもちろんのこと、作品や作者を知ることでよりアートの世界を楽しむことができます。
皆さんも、普段何気なく利用している駅や公園にオブジェが設置されていたら、その背景についてぜひ調べてみてください。
新たな発見がきっと見つかるはずです。
