西千葉には一風変わった施設があります。
それは、みんなでシェアするまちの工作室「西千葉工作室」。

西千葉工作室の詳しい紹介は後ほどするとして、
今日も悩みを抱えた小学生がやってきました。


ごめんくださーい!
こんにちは。今日はどうしたの?


これ(つくりたい)

カブトムシか!一緒につくろう!

子どもから大人まで誰でも利用できる「西千葉工作室」とは?
西千葉工作室は、まちの中にある“みんなの工作室”。
ものづくりに必要なスペース・道具・材料・アイデアをシェアできる場所として、子どもから大人まで幅広い世代が訪れています。

「棚をつくりたい」「壊れた家電を直したい」「工作を通して子どもと楽しい時間を過ごしたい」。そんな想いを持った人が、気軽にものづくりができる場所で、作業スペースや工具の利用だけでなく、材料の購入やスタッフへの相談もできて、ものづくりに関する「困った」「やってみたい」をサポートしてくれる頼れる存在なのです。
ここからは、先ほどの少年の工作の様子と合わせて施設紹介をさせていただきます。
カブトムシロボをつくりたい(電子工作編)
どんなカブトムシロボがいいの?


Tシャツのカブトムシ、ぶーんって、うごいているから、うごくようにしたい

そしたらモーターを組み込んで、動かせるようにしてみるのはどうかな?
まず、これが動くために必要な車輪


ふむふむ・・・

車輪を回すモーターにはんだ付けをして配線をつなぐ。
さらに、グルーガンを使って、モーターなど駆動系を台座に固定してみよう


(いちねんせいのレベルをこえているきがする)

「壊れたら なおしてつかう」を当たり前に。西千葉工作室が思い描くもの
少年がカブトムシロボの配線を組んでいる間に、西千葉工作室のプロジェクトマネージャー永嶋さんにお話を伺いました。

―――西千葉工作室を設立された経緯や、この施設が目指していることを教えてください
西千葉工作室は、まちづくりプロジェクトの一環としてスタートしました
この施設が目指しているのは、ものづくりを通して皆さんの生活を豊かにし、何かにチャレンジするきっかけを提供すること。「つくる」「なおす」「つくりかえる」をコンセプトに、ものづくりと暮らしの距離をぐっと近づける存在でありたいと考えています。
西千葉は、大学があり閑静な住宅街が広がる一方で、昔ながらの商店も残る魅力的な場所。実際、西千葉工作室の両隣は八百屋さんと床屋さん。そんな、どこのまちにもあるような、親しみやすい存在になることを目指しています。
―――どのような方が利用されていますか?
ご利用者は本当に幅広く、お子さんからシニアの方までいらっしゃいます。利用目的も様々です。引っ越した家に合わせてオリジナルの棚をつくったり、趣味のカメラメンテナンスのために広い作業スペースを求めて来られたり。お子さんの自由研究や学生さんの課題制作の場にもなっています。



いろいろな機材があるので、ご自宅にはないレーザー加工機を使いたいという方や、電子工作の相談に来られる方もいます。皆さん、本当に色々な目的で、ものづくりを楽しみにいらっしゃっていますよ。
―――ホームセンターでも工具を貸してくれたりしますが、そういったスペースとは違うのですか?
ホームセンターの工具レンタルとは少し目指しているところが違うかもしれません。
ホームセンターは、ご自身である程度ものづくりができる方、例えば設計図をひけて「あとはこの部分をカットしたい」といった方が利用されるイメージがありますよね。もちろん、そういう方がうちを利用してくださることも大歓迎です。
ただ、私たちが特に意識しているのは、「こういうものをつくってみたいけど、どうやって始めたらいいんだろう?」とか「これって自分にもつくれるのかな?」と、まだ、ものづくりとの距離を感じている方でも、気軽に一歩を踏み出せるような場所であることです。



こんな利用者さんがいました。「うちの子どもの言っていることがわからないので手伝って!」と親子で来られた方。今はYouTubeでお子さんが自ら学ぶことができるので、親御さんが知らない用語で「〇〇がつくりたいんだ!」と言ってきたそうなんです。それで、この施設を頼ってくださったんです。
まさに、そういった「どうしよう・・・」という時に頼れる場所でありたいんです。
ですから、置いている機材も、プロ仕様の高度なものばかりというよりは、初めての方でも安全に、そして「これなら自分にもできそう!」と思っていただけるような、使いやすさを重視して選んでいます。
カブトムシロボをつくりたい(木工編)
少年の方は、電子工作部分が完成。ここからはスタッフの宮﨑さんが、カブトムシの見た目に近づけるため、装飾として木工をサポートしてくれました。

カブトムシの角はこう生えていて、目はこの位置。これを再現してみるのはどう?


カブトムシって、リアルでみるとちょっとこわいね

角の形に板をカットしてみよう。気を付けてね


オーケーラジャー

目の位置はこのあたりかな?


うん、そんなかんじ。リアルよりもかわいくしたい

これまでの利用者さんで印象に残っているエピソード
―――永嶋さんは、たくさんの「つくりたい!」に応えてきたかと思います。印象に残っているエピソードはありますか?
そうですね。たくさんあるのですが、3つほどご紹介させてください。
破壊された巨大トカゲのケージ

以前、若い男性の方が慌てて飛び込んできたことがありました。なんでも、ご自宅で体長1メートルを超える大きなトカゲを飼っているそうで、そのトカゲがケージを壊してしまったそうなんです。
このままでは窓ガラスを割って逃げ出してしまうかもしれないとのことで、大急ぎで工作室にある材料を使ってケージ修理をしたことがありました。
その男性は、普段から工作室を利用している方ではなかったんですが、「特殊なケージだからすぐに新しいものが手に入らない。そうだ!西千葉工作室なら何とかなるかもしれない!」と駆け込んできてくれたのが、とても嬉しかったです。
卓球少年の自主練マシーン

卓球部に入っている中学生の男の子も印象的でした。
部活動の練習だけではなかなか上達しない、でも試合で勝ちたい。そこで、自主練習のためにピンポン玉が自動で出てくる練習用マシーンが欲しくなったそうなんです。とはいえ高価で買えない・・・。
そこで「工作室でつくれないか?」と相談に来てくれたんです。
スタッフのサポートのもとマシンを自作しました。その後、「マシーンを使った練習のおかげで、試合に勝てたよ!」と報告しに来てくれて、すごく嬉しかったのを覚えています。
おばあちゃんのヒーター

お母さんと娘さんが、おばあちゃんが長年使っていたヒーターを修理したいと持ってこられたこともありました。
「今の家電はできることが多すぎて、ボタンがたくさんあるし、新しい使い方を覚えるのは大変。おばあちゃんにとっては、このシンプルなヒーターが一番使いやすいんです」と。新しいものを買うのではなく、愛着のあるものを大切に使い続けたいという想いが伝わって、とても温かい気持ちになりました。
―――スタッフの方が高校生からシニア世代まで多く所属されています。皆さんはどのような役割を担っているのですか?
はい、うちのスタッフは高校生からシニアの方まで約25名ほどのボランティアスタッフが関わってくれています。
まず、基本的な役割として、皆さんのものづくりを「教える」というよりは、「サポートする」「伴走する」というスタンスです。一緒に応援しながら、ものづくりを楽しんでいただくお手伝いをしています。ですから、スタッフ一人ひとりに「あなたはこのジャンル担当ね」と割り当てているわけではありません。

もちろん、機械の使い方をレクチャーしたり、希望するスタッフが講習やワークショップの講師を務めたり、専門的なスキルを持つスタッフがマンツーマンで相談に乗ったりすることもあります。
ただ、私たちにとって一番大切なのは、スタッフ自身がこの場の雰囲気やものづくりそのものを、面白がってくれることなんです。「この場所が好きだから」「こういう取り組みに関わりたいから」という想いで集まってくれています。
―――西千葉工作室の利用を考えている方や、ものづくりに興味があるけれど一歩踏み出せないでいる方へメッセージをお願いします
もし、「こんなものをつくってみたいけど、自分には難しそうだな」とか「やってみたい気持ちはあるんだけど、どこでどう始めたらいいんだろう」と、少しでも諦めかけてしまっていることがあるのなら、ぜひ一度、西千葉工作室に来てみてください。

特別なスキルや経験は全く必要ありませんし、「ものづくりって自分にはできないかも」なんて気負う必要は全くありません。多種多様なイベントやワークショップも頻繁に開催しています。



「なんだか楽しそうだな」「ちょっとやってみようかな」という、気軽な気持ちで来ていただいて大丈夫です。
皆さんの「やってみたい」という想いを、私たちができる限りサポートします。道具の使い方から相談に乗りますし同じように何かをつくろうとしている仲間に出会うこともできます。
ぜひ、気軽に遊びに来てください。
カブトムシロボをつくりたい(完成編)

やったー!!できた!!
おお!遂に完成したね!



遂に完成した少年のカブトムシロボ。果たして本当に動くのでしょうか?

無事に動きました!単に走るだけでなく操作可能なラジコン仕様になっています。
こちらは、その後少年が自宅にて塗装を施したカブトムシロボと少年からのコメントです。

こだわりのポイントは、ほんもののカブトムシとおなじで、はねを2まいにしたこと。
ボタンを2ついっしょにおすとまっすぐ。どっちかをおすとそっちにまがります。
こんどは、プロペラをつけて、そらをとべるカブトムシロボ マーク2にかいぞうします

自分の手で一からつくったものだからこそ、愛着を持って大切にし続けることができます。
なんでも「買う」という選択肢を選んでしまいがちな世の中ですが、「つくる」「なおす」「つくりかえる」という選択肢を取り入れることで、日常がもっと楽しくなるかもしれませんね。
西千葉工作室
・住所:千葉県千葉市稲毛区緑町2丁目16−3 萩原ビル 1階
・HP:https://nishichibakosakushitsu.com/
・Instagram:https://www.instagram.com/nishichiba_ksks/
・公式LINE:https://line.me/R/ti/p/@nzo1067b