既に開催中の千葉国際芸術祭2025をご存じでしょうか。

9月19日(金)~11月24日(月)までの間、千葉市内のいたるところにアート作品が展示されているんです。
千葉開府900年記念のシンボル的な事業で、今回が第一回目。鑑賞料は無料。千葉市周辺にお住いの方はもちろん、アートに興味があるのならぜひ一度は展示を見に行ってほしい。そんなまち全体を美術館にしてしまうアートの祭典です。
学美の杜TIMESは、展示開始前に行われたプレス向けツアーに参加してきました。
【西千葉エリア】西千葉駅の高架下に巨大な女神像?吊るされた大量の洋服?
千葉国際芸術祭2025は、千葉市内各地に文化創造拠点(アーツフィールド)を設けていて、「千葉駅周辺エリア」「市場町・亥鼻エリア」「千葉市役所周辺エリア」「西千葉エリア」「千葉公園周辺エリア」「海浜エリア」の6エリアと「その他エリア」に分けられています。

国内外32組のアーティスト等による37のアートプロジェクトが各エリア内に点在するかたちで展示されているんです。編集部がツアーの中で巡ったのは「千葉駅周辺エリア」「市場町・亥鼻エリア」「西千葉エリア」。
中でもインパクトという意味で最も印象に残ったのが、西千葉エリアで展示されていた、この作品。
【西千葉エリア】臥遊-ガード下神殿- / 伊東 敏光

全体像をカメラにおさめることできないほど巨大な女神像。
その全長は約18mで、JR西千葉駅の高架下に横たわっています。


解体資材や不要になった家具でつくられ、女神の体には地域で暮らす人々の姿が板絵で描かれています。また、会場入口には住民とつくった風鈴のゲートも設置されています。



この作品が展示されている空間自体をガード下神殿と命名。
「有用と無用」「自然と人工」など、社会が当たり前とする価値観を問い直し、日常の悩みや希望を祈る場=神殿として表現されたそうです。
会場:JR西千葉駅高架下(千葉県千葉市中央区春日2丁目24−2)
【西千葉エリア】まちばのまちばり / 西尾 美也

西尾美也さんによる服づくりのプロジェクトです。
地域から集めた古着を使い、「音の人」「ボタンの人」などのテーマで参加者が切ったり縫ったりしながら、ユニークな衣装を制作するワークショップをプレ期間中に実施しました。


その成果として誕生した市民アーティスト「まちまちテーラー」が、会場で来場者のオーダーを受けて、新しい服を生み出します。





巨大な棚のような空間には、制作された洋服が展示されています。また、来場者は自分のアイディアをオーダーシートに書き込むことで、参加することもできる体験型のアートとなっています。
会場:JR総武線高架下 西千葉公園横(千葉県千葉市稲毛区黒砂台3-228外)
【千葉駅周辺エリア】駅の中でみんなでアートをつくり、廃棄物の未来を考える
【千葉駅周辺エリア】STATION to STATION / スロー・アート・コレクティブ

「STATION to STATION」(スロー・アート・コレクティブ)は、千葉都市モノレール千葉駅を会場にした市民参加型のアート。
竹と紐を使い、参加者が自由に結んだり編み込んだりすることで、駅の空間に巨大で装飾的な立体が少しずつ立ち上がっていきます。



完成した空間には楽器も仕掛けられ、叩いたり自動で音が鳴る仕組みがあり、訪れた人が遊びながら作品に関われるようになっています。
日常の通過点である駅を「人が集まり、交流し、遊ぶ場」へと変える共創型の作品です。
会場:千葉都市モノレール 千葉駅2階(千葉市中央区新千葉1-1-1)
【千葉駅周辺エリア】33年後のかえる / 藤 浩志



制作者である藤 浩志さんの実体験や社会情勢の変化から、33年でひとつの世代が入れ替わるとし、世代交代をキーワードに、不要になったおもちゃを交換する取り組み「かえっこバザール」で集まったプラスチック素材を使った作品です。


これらは「かえるの池」と呼ばれ、作品をよく見てみると、小さなおもちゃの集合体でできているのが分かります。これは前の世代が生み出した都市や商品、そして廃棄物が次の世代にどのように受け継がれ、どのように循環していくのか。廃棄物の未来について考えさせられる作品となっています。

また、本作品の中には作品名にもなっている、かえるが2匹だけ隠れているという仕掛けが施されています。鑑賞の際は、ぜひ2匹のかえるを探してみてください。
会場:センシティタワー 南アトリウム(千葉市中央区新町1000)
【市場町・亥鼻エリア】虚構の世界や、“穴”が見ている光景
【市場町・亥鼻エリア】パラレルワールド / 沼田 侑香

千葉都市モノレール県庁前駅の使われていないホームを舞台にした作品。
千葉国際芸術祭を知らない方が、県庁前駅のホームの降り立ったら、間違いなく「これはなんだ?」と検索せずにはいられないことでしょう。
ホーム一面に、等身大のモザイク調人影パネルが設置されていて、反対側のホームから鑑賞することができます。鑑賞する角度によっては人影が目立たなくなる特殊な加工がされていて、自分が存在する世界とは別の世界が現れたり、消えたりする仕組みです。


現実には存在しない「もうひとつの世界線」を可視化することで、現実と虚構の境界が揺らぐ不思議な感覚を体験できる作品です。
会場:千葉都市モノレール県庁前駅(改札内)(千葉市中央区市場町1-2)
【市場町・亥鼻エリア】Words of Light 光の言葉 / 鈴木 のぞみ


この作品が展示されているのは、かつて郵便局として活用されていた建物。
しばらく使われていなかったことが明らかな空家の中に入ると、真っ暗な空間で“穴”が映し出すアートを鑑賞することができます。
ピンホールカメラの原理(小穴投影現象)と聞くとイメージできるかもしれません。かつてカメラは小さな穴から取り入れた光をフィルムや印画紙に写すことで風景を画像として切り取っていました。


本作品は、千葉市民とともに市内で見つけた小穴投影現象の起きている穴を可視化した作品です。
会場に元郵便局であった空家が利用されているのにも理由があります。ポストの投函口で発生する小穴投影現象を見ることができるのです。


長らく使われていなかった施設ですが、そこにある“穴”はずっと外の風景を見続けていたのです。普段は誰も気にも留めない小さな“穴”に焦点をあてたアートです。
会場:旧千葉亥鼻郵便局(千葉県千葉市中央区亥鼻1-4-21)
見て終わりではない。まち全体でつくり続ける千葉国際芸術祭
ここまで、現在展示されているアートをいくつか紹介しましたが、千葉市内を丸ごと美術館にする千葉国際芸術祭ですから、他にもたくさんの展示が行われています。

Secret people(秘密の人々) / アレクセイ・クルプニク
千葉市をひとつの有機体として捉え、千葉市の中で働く人々に密着。彼らの日常をストリートドキュメンタリー形式で撮影・構成した写真展示。
会場:そごう千葉店正面入口前(住所:千葉県千葉市中央区新町1000)




キメラ遊物店/アーツうなぎ / 岩沢兄弟
1871年に創業し、2014年に閉店した老舗割烹店「うなぎ安田」の店舗を舞台としたアートプロジェクト。
1階ではものづくりの公開制作やワークショップを、2階では当時の雰囲気が残った空間で、アートに関するトークイベントや交流会、芸術祭の情報発信が行われています。
会場: 会場名:アーツうなぎ(千葉県千葉市中央区市場町9-14)




移動式縁側 / チャール・チャール・エージェンシー
日本の伝統的な住宅設備「縁側」を、海外アーティストの視点で可動式の小さな公共スペースにした作品。期間中、千葉駅周辺に設置され、自由に触れるようにするとともに、千葉というまちに対する想いや願いを用意されたキューブに書き込むことができます。
会場:つくるにわ(千葉県千葉市中央区市場町6-14)


また、本イベント期間中には各種ワークショップやイベントが頻繁に開催されていて、参加型アートプロジェクトの名にふさわしいプログラムとなっています。

一日で全てを鑑賞することは、作品の多さから難しいですし、参加型アートに関しては日々進化をしていきます。
ぜひ一度。ではなく、ぜひ頻繁に千葉市を訪れてみてはいかがでしょうか。
地域の可能性をひらく参加型アートプロジェクトの祭典「千葉国際芸術祭2025」を通して、千葉というまちを知るとともに、もっと興味深く感じるはずです。
千葉国際芸術祭2025
・公式サイト:https://artstriennale.city.chiba.jp/
※集中展示・発表会場をご案内する「巡るマップ」(PDF)