演奏パフォーマンス、櫓(やぐら)を囲んで踊る老若男女、DJの奏でるリリック、バリエーション豊富な屋台。






これは、毎年7月に千葉市稲毛区緑町1丁目で開催されている「みどりまち盆踊り2025」の様子。
千葉市主催の大規模なお祭りではなく、一自治会が主催している地域のお祭りです。
自治会主催とは思えないほどの賑わいですが、わずか数年前には、お祭り自体の継続が危ぶまれていました。
新型コロナウイルス、高齢化によって継続危機に
みどりまち盆踊りの歴史は古く、千葉市観光協会によると今年で75年目を迎えるのだそう。
75年前の千葉市といえば、戦後復興の途上にあり道路の舗装も十分ではない時代。
旧国鉄の千葉駅は、現在の千葉市民会館のそばに駅舎があり、もちろんモノレールなんてありません。


そんな昔から、夏の風物詩であったこのお祭りに異変が起きたのは、新型コロナウイルスが流行した2020年。
感染防止を目的に全国的に各種イベントは自粛に。もちろん、みどりまち盆踊りも例外ではありません。2020年から3年間にわたって開催が見送られたのです。
その後、コロナは収束。やっと開催できるかと思われましたが、次の問題は自治会メンバーの高齢化でした。
盆踊りに必要な櫓。町内にあるリフォーム会社が、これまで設置工事を担当していました。ですが、リフォーム会社の職人たちも高齢となり、現場仕事が困難になっていたのです。
また、櫓だけでなく、お祭りの開催は夏。炎天下の中でお祭りを運営するのは、既存の自治会メンバーだけでは困難な状況にあったのです。
そんな中、救世主が現れました。
それは、過去の記事でも紹介している、西千葉工作室の運営母体である株式会社マイキーと株式会社ZOZO。
自治会長に聞いた。みどりまち盆踊り存続危機に現れた救世主
みどりまち盆踊りがどのようにして復活を遂げたのか、ここからは主催である緑町1丁目自治会 自治会長の坂下さんにお話を伺いました。

――自治会のお祭りにマイキーさんやZOZOさんが参加するようになった経緯を教えてください。
みどりまち盆踊りは、元々、我々自治会と子ども会。その後、学童保育のNPO法人「学童保育クラブ風の子シュワッチ」さんや、緑地帯の整備などでもお世話になっている「NPO法人Drops(ドロップス)」さんと、一緒にやっていました。
でも、そんな中でコロナ禍になり、お祭りは中止になったんです。
コロナが明けた後、お祭りをやろうにもメインの自治会はおじいちゃんおばあちゃんでしょ。
どうしようかなというときに、マイキーさんとZOZOさんがこの町内に来てくれた。で、自治会の活動や役員会にも出ていただくようになったのが、きっかけですね。
緑町公園の道路向かい、元々は住宅が建っていた場所にマイキーさんが「HELLO GARDEN」という、地元開放のオープンな場所を作ったんです。
ZOZOさんも、元々スーパーマーケットがあった場所に「ZOZOの広場」を作りました。
これによって、緑町公園の両隣のスペースも使えるようになり、エリアを拡大してみどりまち盆踊りを開催しようとなったんです。2023年、4年ぶりの開催でした。

――マイキーさん、ZOZOさんの参加は助けになりましたか?
ええ、もちろんです。櫓を組むのだって、昔は地元のリフォーム会社さんにお願いをしていたんだけど、そのリフォーム会社さんがもう難しいと。職人さんたちが高齢化していなくなっちゃったそうで。
そこで、マイキーさん、ZOZOさんたちとともに自分たちで組み立てようとなりました。
リフォーム会社さんには、我々にはできない配線関係や現場監督の部分をお願いして、力仕事部分を皆でやりました。


マイキーさん、ZOZOさんが参加するようになってから今年で3年目。町内の枠を超えて色々な方が、このみどりまち盆踊りに来てくれるようになりました。
DJブース!踊り狂う老若男女!みどりまち盆踊り2025レポート
困難を乗り越えて復活を遂げた、みどりまち盆踊り。
2025年の今年も無事に開催されました。編集部が取材したのは、2025年7月26日。この日はちょうど隅田川花火大会が開催されていた日です。
大きな花火こそ打ち上げられませんが、みどりまち盆踊り会場には町内だけでなく近隣地域からもたくさんの人が訪れ、自治会主催のお祭りとは思えない活気を帯びていました。

イマジン盆踊り部&DJブース!
まず、会場を沸かせたのは生唄・生バンドによる盆踊りアーティスト「イマジン盆踊り部」。

軽快な演奏で会場のボルテージを一気に引き上げます。小さなお子さん連れのご家族から、年配ご夫婦まで、皆で大騒ぎしながら盆踊りを楽しみます。
知らない人同士が手をつないで円をつくり、気づけば皆が笑顔に。演奏最後には自然とアンコールが巻き起こるほど、会場を盛り上げていました。



さらに、DJが音楽を響かせます。
音楽に身をゆだねてリズムをとる人、見様見真似でオリジナルダンスをする子どもなど、各々が自由な楽しみ方で満喫。


子どもに優しい遊びコーナーがたくさん
お祭りの楽しみといえば遊び屋台です。子どもたちに優しい屋台遊びが盛りだくさんでした。
こちらは、NPO法人Dropsさんのボール投げ。入れた点数によってお菓子が貰えます。

その他にも、スーパーボールすくいや動物すくいなど、子どもが喜ぶ手作りの遊び屋台が盛りだくさん。


中でも気になったのは、こちらのマルふ百貨店。

千葉在住のアーティスト集団だそうで、メンバーの仲村浩一さん(画像右)は、昨年度の岡本太郎現代芸術賞にて岡本太郎賞を受賞したという、とんでもないアーティストであることが判明。
受賞作品である『房総半島勝景奇覧/千葉海岸線砂旅行』は、なんと房総半島を歩いて一周しながら集めた砂で千葉を表現したというから驚きです。
このマルふ百貨店は、そんな仲村さんたちが似顔絵を描いてくれる出店。何とも贅沢すぎる体験ですね。


地元店舗によるバリエーション豊富なフード
みどりまち盆踊りの出店はいわゆる的屋さんではなく、地元店舗たちによる出店です。
近くにはあるけど、これまで立ち寄ったことのなかったお店のグルメを楽しむことができます。
西千葉駅に隣接するエキナカ施設「ペリエ西千葉」内にある日本酒専門店「Sake Base(酒ベース)」の出店。
種類豊富な日本酒に、明かりのついたブロックを添えるオシャレさ。



インド、ネパールの本格的料理が楽しめる「アジアンダイニング ヒマラヤンキャラバン」では、チーズナンやインド風焼きそばなど、普通の出店ではなかなか味わえないグルメを提供していました。

櫓を中心にみんなで盆踊り
そして、日も暮れ始めたころに始まったのは、緑町公園エリアでの盆踊りです。
こちらでは、子ども会の太鼓演奏とともに 『千葉踊り』という千葉ならではの曲、『きよしのズンドコ節』『マツケンサンバⅡ』といったお馴染みの曲で盛り上がります。



子どもから大人、おじいちゃんおばあちゃんまで、世代関係なく音楽に合わせて踊り、手を叩きます。櫓に吊られた提灯には、地元店舗や個人の名前が並びます。
地域で作り上げたお祭りという印象がしっかりありながら、DJブースなど今時コンテンツもある。古き良き夏の風物詩のようでもあり、新しさもある。
数年前まで開催が危ぶまれていたことが、嘘のような活気を取材しながら感じました。
来場者フォトスナップ
最後に来場者の方にも取材をしましたのでご紹介させていただきます。




緑町公園では、昔ながらのみどりまち盆踊り文化を残しつつ、ZOZOの広場・HELLO GARDENでは新しい取り組みを行う。それぞれの良さで、昔から住んでいる人、最近この地にやってきた方、皆が楽しめるお祭りになったと喜ばれていました。

奥様は過去にZOZOの広場で行われた週末イベント(マルシェ)に参加したことがあり、ZOZOの広場公式Instagramで、このお祭りを知り、初めて来たとのこと。大はしゃぎのお子さんが印象的でした。

自宅近くで例年盆踊りをしていた町内のお祭りが今年中止になってしまったそうで、みどりまち盆踊りに来たそう。
数年前には開催すら危ぶまれていた、みどりまち盆踊り。
それが今、地域の人々や新たな担い手の力によって、かつてないほどの賑わいを見せています。
高齢化や時代の変化をしなやかに乗り越え、昔ながらのあたたかさと、新しい風が混ざり合うこのお祭りは、地域のつながりが生み出す奇跡のような光景でした。
来年の夏もまた、この場所にたくさんの笑顔が咲くことでしょう。
みどりまち盆踊り(緑町公園)
・住所:千葉県千葉市稲毛区緑町1丁目17